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2020年11月28日 (土)

忘れようとして(47)~新選組副長:土方歳三~その6~お雪ふたたび

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(前回からのつづきです)

 

「鬼の目にも涙」と申しますが、

“泣く子も黙る” 新選組の副長、土方歳三

涙を見せた場面の一つ目を原作から読んでみます。

長い引用になりますが、ご容赦のほどを。

 

1867年(慶応3年)10月に

徳川慶喜は将軍を辞することを天皇に伝えました。

いわゆる大政奉還

12月には新選組は京を離れ、伏見へ向かうことになります。

 

そして京を去る最後の日……。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幹部で屯営に残ったのは、副長の歳三と病床の沖田総司だけである。

「今夜はお前の看病をしてやるよ」

歳三は、沖田の病室に机をもちこみ、手紙を書いた。

お雪さんへですか」

沖田は、病床からいった。

「私はまだお会いしたことはないが、沖田総司からも、

お達者を祈っていますと書きそえてください」

「うん。―」

歳三は、瞼をおさえた。

涙があふれている。

京への別離の涙なのか、お雪への想いがせきあげてきたのか、

それとも沖田総司の優しさについ感傷が誘われたのか。

歳三は泣いている。

机へつっ伏せた。

 

沖田は、じっと天井をみつめていた。

(青春はおわった。―)

そんなおもいであった。京は、新選組隊士のそれぞれにとって、

永遠に青春の墓地になろう。

この都にすべての情熱の思い出を、いま埋めようとしている。

歳三の歔欷はやまない。               (この章 完)

 

(筆者注:歔欷【きょき】=「すすり泣き」の意)

~~~~~~~~~~~~司馬遼太郎「燃えよ剣」(下)『大暗転』より

 

 

明けて慶応4年の1月に、あの鳥羽伏見の戦いは勃発しますから、

まさに“開戦前夜”の出来事ですね。

 

歳三が誰に宛てた手紙を書いているか、

沖田にはすぐに分かりました―

「わたしからも、お達者を祈っていますと…」

は、いかにも人の好い沖田の言いそうなセリフです。

 

 

(青春はおわった。―)

歳三もおそらく、同じ想いだったのでしょう。

 

 

作者の司馬遼太郎ですが、この『大暗転』の章だけは、

これまでの歳三と全く違った面を描きつつ、

小説全体から見ても、珍しく感傷的に過ぎるラストシーンを、

採用しました。

 

 

“俺の恋も終わった、いや、それどころか、

いよいよ明日の命さえもわからなくなってきた…“

 

一瞬、涙にくれた歳三ですが、

以下の章(『鳥羽伏見の戦い・その1』)では

「この戦さは勝つ」と言わせしめているのです。

 

やはり土方歳三、

この男、ただ者ではありません。

                                                         (つづく)(文中敬称略)

 

*司馬遼太郎『燃えよ剣』は、新潮文庫版から引用しました。

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