忘れようとして(43)~新選組副長:土方歳三~その2~和泉守兼定
(前回からのつづきです)
「総司、みろ、雲だ」「雲ですね」
という、まるで漫才のような(笑)
土方歳三と、沖田総司の二人の会話をご紹介しました。
今回も同じような場面から始めてみます。
~~~~~~~~~~~~~~
と、ぎらりと剣をぬいた。
和泉守兼定、二尺八寸。すでに何人の人間を斬ったか、
数もおぼえていない。
「これは刀だ」
といった。歳三の口ぶりの熱っぽさは、相手は沖田と見ていない。
自分にいいきかせているような様子であった。
「総司、見てくれ。これは刀である」
「刀ですね」
仕方なく、微笑した。
~~~~~~~~~~司馬遼太郎「燃えよ剣」(下)『大暗転』より
前回記事の、京の四条大橋のシーンから2年後、
慶応3年11月のこと。
15代将軍:徳川慶喜は大政奉還を朝廷に奏上している。
そしてこのとき、沖田総司は、結核のため病床に。
『燃えよ剣』ファンには、印象的な場面だと思います。
なぜなら、この直後に、
土方歳三のあの有名なセリフが登場するからです。
~~~~~~~~~~~~~~
(中略)
と、沖田はちょっとだまってから、
「新選組はこの先、どうなるのでしょう」
「どうなる?」
歳三は、からからと笑った。
「どうなる、とは漢(おとこ)の思案ではない。
婦女子のいうことだ。
おとことは、どうする、ということ以外に思案はないぞ」
~~~~~~~~~司馬遼太郎「燃えよ剣」(下)『大暗転』より
2020年の今日から見ますと、
さすがにジェンダー論からは問題もありそうなフレーズですが、
土方歳三の生き方を端的に表しているといえます。
9年ほど前、
ミュージカルの『サウンド・オブ・ミュージック』について
ブログに書いたことがあります。
そのとき、
(『サウンド・オブ・ミュージック』を直訳すれば
『音楽の調べ』となるように)
「ある意味、このミュージカルの最大の主役は『音楽』です」
と、記しました。
それに倣うと、
「『燃えよ剣』に別の主役があるならば、それは『剣』である」
ともいえましょう。
上にありますように、その剣こそが
「和泉守兼定」。
土方歳三が実際に使っていた
この「和泉守兼定」は、現存しています。
(つづく)
*司馬遼太郎「燃えよ剣」は、新潮文庫版から引用しました。
PS:ピンク色の文字にはWikipediaへのリンクを貼っています。
最近のコメント