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2019年5月 5日 (日)

忘れようとして(32)~沖田総司と「燃えよ剣」<4>。

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                ↑

(沖田総司を題材にした作品はいっぱいあります。

小説・戯曲・TV・マンガ・エッセイ・イラストetc

上の写真は、大内美予子の小説「沖田総司」新人物往来社1972年刊)

 

 

(前回からのつづきです)

 

実は、山南敬助は「脱走」したのではなかった―

そんな異説があります。                

 

当時、新選組内部に権力抗争があった、というのは事実のようです。

そして、土方歳三は、山南を排除するために、

ある策略をめぐらした、というものです。

つまり…

 

総長の山南は「公用である」と、新選組屯所から外出していった、

そこで、彼と一番仲の良い沖田総司を呼びに行かせる、

帰ってきたところを、「脱走」の罪をデッチ上げて、山南を処刑した―

 

山南の「公用」については、

仕組まれた“罠”か、あるいは、実際にそうであったのか、

両方ともあり得ると思いますが、

この仮説なら、前回に挙げた、

この事件の矛盾点は解消されそうに思います…

 

 

ただ、如何せん、真実のほどは、不明です。

 

 

司馬遼太郎の「燃えよ剣」では、通説どおり、

「脱走」説に基づき、描かれていますが、

山南と沖田との会話は、驚くほど簡潔なものです。

 

また、沖田総司を扱った小説は数多く存在する中で、

手元にある大内美予子の小説「沖田総司」を開きますと、

(お察しのとおり、総司ファンには、女性が多いのです)

こちらも「脱走」説ではありますが、

司馬作品と比べ、非常に長い二人の会話が続いていきます。

 

ただ、沖田の発する言葉に共通点が見られるのですね。

 

「燃えよ剣」では、

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「山南先生が、どうしても江戸に帰りたいとおっしゃるなら、

刀をお抜きください。私はここで斬られます」

~~~~~~~~~~司馬遼太郎「燃えよ剣」(上)『憎まれ歳三』より

 

次に、大内の描く沖田。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「私は、ここで死んでもいいのです。

だが、山南さんにはどこかで生きていてほしいのです」

~~~~~~~~~~~~~大内美予子「沖田総司」『山南敬助』より

 

沖田総司は、自分が病気(=結核)であることから、

そう長い命ではない、ということを自覚していた―

だからこそ、山南に対して上のような言葉を言わせしめたのですね…

 

山南の無念の想い、またそれが解り過ぎるほど解っている沖田…

胸がしめつけられるような辛い場面ではあります。

 

司馬遼太郎は山南の切腹の場面に続けて、彼の“愛人”であった

明里(【あけさと】、又は【あきさと】)との別れについても書いています。

この経緯は、子母澤寛の「新選組物語」の『隊士絶命記』に

微に入り細にわたる記述があるのですが、

現在、この山南と明里のエピソードは、

子母澤寛の創作ではないか、という説が有力だそうです。

その理由としては、

 

1.山南は、「岩城升屋事件」の斬り合いの際にケガをしていたから、

 遊郭へ通える時間などなかったのではないか

2.当時の京都島原の遊郭の名簿を見ても、

 太夫→天神→芸妓(これは、遊女の“ランク”。左方が上位)

のいずれにも 「明里」の名前は無い

3.子母澤の著わした『隊士絶命記』に登場しているのが、永倉新八

彼は山南から明里宛ての手紙を預かったとあるが、

彼の書き残した書物(彼は維新後も生き延びた)には、

このことは一切触れられていない           等々。

 

忘れようとして(29において、

「子母澤寛の書いた『新選組三部作』は、

内容的には、主に“聞き書き”といった手法で構成されています」

と、私は書きましたように、

子母澤のフィクションの部分もあったりするそうです。

 

これは司馬遼太郎の「燃えよ剣」も同様で、

いかにも史実のような文章でありながら、

創作(或は勘違いか)とおぼしき箇所も混じっている、とのことですので、

歴史の専門家でもない小生には、誠にタイヘン(苦笑)。  (つづく)

                                                              (文中敬称略)

 

*司馬遼太郎「燃えよ剣」は、新潮文庫版、

大内美予子「沖田総司」は、新人物往来社刊からそれぞれ引用しました。

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