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2016年2月24日 (水)

貴志康一氏作曲の歌曲を鑑賞いたしました。

暗いニュースばかりが多い昨今ですが、ちょっと思い出してください、

昨年は、大村智・北里大特別栄誉教授と、梶田隆章・東京大宇宙線研究所長の

お二人がそろってノーベル賞を授賞され、その授賞式や晩餐会の様子が、

TVでよく見られましたね。

ところで---

そのノーベル賞の晩餐会で、日本人の音楽家の作った楽曲が演奏されたことが

過去にあったということを、ご存知でしょうか?

 

その音楽家こそ、貴志康一( -Wikipedia、その人でありました。

リンクを貼ったWikipediaにも、この事についての記述がありますが、

2015/10/17の毎日新聞阪神版からの記事もご紹介いたしましょう。

 

(引用開始)~~~~~~~~~~~

欧州で活躍した芦屋市ゆかりの作曲家・貴志康一(1909〜1937)の曲を

演奏する「貴志康一の歌曲と名曲コンサート」が18日、

芦屋市民センターのルナ・ホール(芦屋市業平町)で開かれる。

貴志の「竹取物語」は物理学者・湯川秀樹博士が

日本人初のノーベル賞を受賞した際に晩さん会で演奏されており、

市民センターは「阪神間の文化と科学の関わりを実感してほしい」と話している。

(中略)

 湯川博士は西宮市在住時にノーベル賞の対象となった中間子論を提唱。

「西宮芦屋研究所」副所長の小西巧治さんによると、湯川博士の妻スミさんの

依頼で、ゆかりのある貴志の曲が演奏されることになったという。

湯川博士が署名した竹取物語の楽譜は

甲南学園の貴志康一記念室に保管されている。   【石川勝義】

(以下省略) ~~~~~~~~~~~     (引用終了)

 http://mainichi.jp/articles/20151017/ddl/k28/040/558000c

と、いうわけで、上の記事にも書かれていた、

昨年10月の貴志康一のコンサートに行ってまいりました。

 

確か、数年前にも、こんな催しがあったはずです。

そのときは、バイオリン曲が演奏されたのでは、という記憶があります。

当時は、残念ながら、仕事の都合で行けませんでしたが。

 

コンサートで取った私のメモを元に、貴志康一( -Wikipediaについての

若干の補足を試みます。

 

 

当日、詳細な御解説をして下さった、

中村八千代氏の談によりますと、貴志康一は、子供の頃より、

音楽、また「絵画」にも、非常な才能を示されていたとのことです。

ですから、「小学校5年生の時、大阪から芦屋市に転居した

と、Wikipediaに書かれていますが、その転居の最大の理由は、

神戸市の深江文化村でミハイル・ヴェクスラーのヴァイオリンの指導を

受けるためであったと、私は推測しました。

 

さて、Wikipediaの下段の「その他」という項目に、貴志は、

「鏡」「春」という映画(日本国、及び文化のPR映画とのことです)の

音楽作曲と監督を務めた、とありますね。

“なぜ、音楽以外に、「映画」なんだろう”と思っていたのですが、

「貴志は絵画の才能も優れていた」という今回のご説明で、

この項目の“謎”が解けた気がしました。

 

Wikipediaに、こんな記載もあります。

1935年に、貴志自身の指揮でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と録音した

同じく、中村氏によりますと、自作作品の他には、

グルック、シュトラウス、ドビュッシーの曲も指揮したそうですから、

そのレパートリーたるや、実に広い。

「ベルリン・フィルを指揮した日本人は、貴志が当時2人目」だったそうです。

(なお、最初は、近衛英麿とのこと)

 

更に、Wikipediaの記事から。

1936年には三回日本でベートーヴェン第九を指揮している。

中村氏のコメントでは、帰国した貴志の日本での人気を決定的にしたのは、

NHK交響楽団の定期演奏会での「第九」の指揮であったとのことです。

特注の大きな指揮台の上を駆け巡る、ダイナミックな指揮が話題となり、

日比谷公会堂を、女性ファンがぐるっと取り巻いたほどの人気だったそうです。

天性の音楽の才能に加え、パフォーマンスにも秀でた才人だったのですね。

貴志氏が、具体的にどのような指揮をしていたのか、今は知る由もありませんが、

私はふと、山本直純氏の指揮 を思い出していました。

 

  

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

さて、今回のコンサートは、新聞記事にあるように、

ソプラノの寺本郁子さんの御演奏による、歌曲が中心でした。

曲目は、「かごかき」「船頭唄」「赤いかんざし」「かもめ」、そして

「さくらさくら」「天の原」6曲です。

最初に掲げた4曲は、詞・曲とも貴志康一の手によるもので、

彼の非凡さがうかがえます。

 

「かごかき」は、貴志作品の中でも、最も有名な曲だそうですが、

私は、「船頭唄」「赤いかんざし」の抒情性に心を奪われました。

“例えとしてふさわしくない”と、お叱りを受けるかもしれませんが、

私見では、竹久夢二の、「宵待草」のような印象を受けた…

と書きますと、おおよそのイメージがお解りいただけますでしょうか。

 

「かもめ」は、彼の育った芦屋浜の思い出をモチーフにしたものだそうです。

「さくらさくら」は、有名な日本古謡に、貴志独自の編曲がなされ、また、

「天の原」は、百人一首でもおなじみの和歌、

阿倍 仲麻呂(あべのなかまろ)作の

「天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも」

に曲を付けたもの。

 

 

コンサートの後半は、ポピュラーなクラシック曲等が演奏され、

とっても豊かな気分でひとときを過ごせました。

ただ“ひとこと多い”「てんけい」として、“不満”をひとつ。

それは、『カッチーニのアヴェ・マリア』の演奏に先立つご紹介でした。

と申しますのも、“この曲はカッチーニの作には非ず”というのが、

現在の音楽界の有力な説ですので、

「アヴェ・マリア~カッチーニ」を聴く。: SAPPARI WAYA

ご紹介の際、この点に一言も触れられなかったのは、残念に思いました。

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

さて、貴志康一の作品を、この度初めて鑑賞したのですが、

私は、非常な好印象を受けました。

日本的なメロディーラインを駆使されて、作曲されている、つまり、

祖国の文化・伝統に大変敬意を払っておられるのですね。

 

 

もうすぐ5年目の「3.11」を迎えようとしています。

当時、様々なコンサートやライブが催されたのですが、私は、

“こうして『G線上のアリア』とか、フォーレの『レクイエム』を演奏することに

意味があるのだろうか、あるいは、生きている私たちの“独善”ではないか“

と思ったことがしばしばあるのです。

この季節。(15)改めて「日本」を聴く: SAPPARI WAYA

その点、貴志康一は、日本民族としての立脚点も、しっかり保持しつつ、

西洋のクラシック音楽にも精通されている。

このような「バランス感覚」は、現代においても重要だと考えます。

 

 

1937年、28歳の若さで風のように駆け抜けていった天才を惜しみつつ

我が国における、クラシック音楽の揺籃期の歴史の空白を埋めていく

このような催しに、今後とも注目していきたいと思います。  (おしまい)

                  (乱文長文妄言多謝)(文中一部敬称略)

PS:

貴志康一の歌曲・バイオリン曲が収録されています。

 

竹取物語◎貴志康一作品集

竹取物語◎貴志康一作品集

湯川秀樹博士のノーベル賞ご受賞時に演奏された貴志作品。

『竹取物語』はこちらからダウンロードできます

Amazon.co.jp ヴァイオリン曲集 竹取物語(貴志 康一): 小栗 まち絵(ヴァイオリン) 戎 洋子(ピアノ): デジタルミュージック

最後に、「中村八千代氏のご解説」として、今回取り上げさせていただきましたが、

申し上げるまでもなく、文責は、「てんけい」にあります。

なお、解説・演奏をつとめられた中村八千代氏、寺本郁子氏は、

公益財団法人アルカディア音楽芸術財団の理事でもいらっしゃいます。

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