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2013年2月20日 (水)

“賢治の宇宙”とIT技術のクロスオーバー~冨田勲氏の「イーハトーヴ」交響曲。

~~~~~~~~~~~~~~

そのとき、いきなり前に井戸があって、その中に落ちてしまったわ

もう、どうしてもあがられないで、さそりは溺れはじめたのよ。

そのとき、さそりはこう云ってお祈りしたというの。

 

ああ、わたしはいままでいくつのものの命をとったかわからない。

そしてそのわたしが、こんど、いたちに捕られようとしたときは

あんなに一生けん命逃げた。それでもとうとうこんなになってしまった。

ああ、なんにもあてにならない。

どうして、わたしはわたしのからだを、黙っていたちにくれてやらなかったろう。

そしたら、いたちも一日生きのびたろうに。

どうか神さま。わたしの心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてず

どうかこの次には、まことのみんなのしあわせのために

わたしのからだをおつかい下さい。

 

って、云ったというの。

そしたら、いつかさそりはじぶんのからだが、まっ赤なうつくしい火になって

燃えて夜のやみを照らしているのを見たって。

~~~~~~~~宮澤賢治「銀河鉄道の夜」(角川文庫)より (引用筆者)

 

「銀河鉄道の夜」からの一節でした。例によって、段落の区切り、読点、

使用漢字等、若干、筆者が手を加えています。

どなたも一度は、手に取られたことがある、ポピュラーな童話だと思います。

ただ、「童話」と呼ぶには、そこには賢治独特の、

深い「哲学」が秘められているようで、難解な部分もあります。

上に引用した箇所は、キリスト教にも影響を受けた

宮澤賢治の思想が、色濃く反映されていると申せましょう。

 

宮澤賢治の別の作品、「注文の多い料理店」は、

皮肉の効いた、トリッキーな童話ですが、より巨視的に見ますと、

上記の「銀河鉄道の夜」の部分と同様、

地球全体の食物連鎖、あるいは、生命の輪廻を象徴しているのかもしれません。

 

 

さて、本田美奈子.さんの「ジュピター」は、

ホルスト作曲の管弦楽組曲『惑星』からの一主題をベースにしたものですが、

今から約30年以上も昔に、この組曲『惑星』をシンセサイザーによるアレンジで

全世界中にヒットさせたのが冨田勲氏でした。

 

その冨田勲氏が、このたび新たなクロスオーバーに挑戦されました。

2/3放送のNHK-TVをご覧になられた方も多いと思います。

その構想は、10年にも及んでいたという、

「イーハトーヴ」交響曲の初演の模様が放映されました。

(「イーハトーヴ」とは、宮澤賢治の造語で、彼の目指した理想郷の名称です)

ある意味、難解で不可思議なこの宮澤賢治の世界を、どのように表現するか―

冨田勲氏が、白羽の矢を立てたのが「初音ミク」でした。

 

「初音ミク」は、簡単に言いますと、「歌える音声ソフト」です。

要するに、コンピューターに歌わせるわけですね。

かなり改良された結果、人間の歌声に相当近づいています。

 

どこか異次元的な賢治の世界観を象徴するには、

この「初音ミク」は確かに“適役”だったのかもしれません。

 

更に、今回は「初音ミク」が、大友直人氏の指揮する

日本フィルハーモニー交響楽団と大合唱団に合わせて踊り、歌うという、

画期的な技術が使われたとのこと。

つまり、「初音ミク」に指揮者や、オケが合わせるのではなく、

指揮者に「初音ミク」が合わせるという点が“ミソ”なのですね。

言うまでもなく、プログラマーの方は非常に苦労されたそうですが。

 

大友直人氏の真ん前に位置したキーボード・プレーヤーが、

「初音ミク」をコントロールされていたようでした。

 

 

冨田勲氏の今回の作品について、やや否定的な意見も見聞きしましたが、

私に言わせれば、なによりも80歳という御年齢で、ひとつずつ音符を綴っていく

―手書きにせよ、PC入力にせよ、です―

という、根気、集中力、体力(もちろん、音楽的才能も)は、

余人には決してできないことだと思います。

ですから、そのことをまず念頭において、言葉を選ぶべきだと思いました。

 

 

今回の成功をふまえて、

このような“バーチャル・シンガー”とのクロスオーバーも、

ますます増えてくるかもしれません…。

 

最後に、―冨田勲先生、素晴らしい作品を有難うございました。

イーハトーヴ交響曲

 

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%8F%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2-%E5%86%A8%E7%94%B0%E5%8B%B2/dp/B00A2GWP6O

PS-----------------

冨田勲氏の公式HP、コンサートの動画もあります。

冨田勲×宮澤賢治×初音ミク。時空を超えたネオ・ノスタルジアの音世界

おなじみのYou Tube、時間は長いのですが、こちらは削除もあるかな----

このたびのNHK-TVですが、権利関係上、「NHKオンデマンド」の配信はないそうです。観られるならば“お早めに”、ということで。

http://www.youtube.com/watch?v=xBxyG7doZkc 

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