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2007年8月19日 (日)

二つの「ジュピター」。(平原綾香さんと本田美奈子.さん)

過日、SAPPARI WAYA: 平原綾香さんのライブIN神戸。<その1-4>――罪ほろぼし。(実践編)において、平原さんの「JUPITER」をご紹介しました。

 

 それなら、今度は、本田美奈子.さんが歌われるところの「JUPITER」にも、触れねばならないでしょう。

 が、いつものこととして、「ええから加減のてんけい」のこと、たいして、益になる話ではございません。(苦笑)

 

 

 「同じ『ジュピター』だが、平原さんは、曲線的、本田さんは直線的」

 

といった評を耳にしたことがありますが、

私も、確かに、それは、合っていると思います。

 

 が、このたび(平原さんのコンサートに行って以来)、私が感じたことは、

 

 むしろ、平原さんの歌が直線的で

 本田さんのほうが、曲線的、ではなかろうか

 

 と、いうことなのです。

 

 

§「天声人語」。

 

ジュピターは、皆さんご存知のように、原曲は、ホルストの組曲「惑星」から、主題を得ていますが、平原さん、本田さん、双方とも、原曲とは、やや異なるメロディーラインに、編曲されています。

 

 Everyday I listen to my heart,

 ひとりじゃない 

            (歌:平原綾香さん、 詞:吉元由美氏)

 

平原さんの「ジュピター」は、あくまで静かで、ややハスキーな、彼女の低音より始まります。

「絞り出すような声」という評もありましたが、確かに、そんな感じでもありますね。

この導入部は、ホルストの原曲と同じように、3拍子(=「ワルツ」)ですが、やがて、4拍子に変わっていきます。

 

 

あたしに 涙ふかせて

泣きたい時には 泣きましょう

             (歌:本田美奈子.さん、 詞:岩谷時子氏)

 

本田さんにおいては、高く、ソフトな歌声で、この印象的なフレーズから、曲が始まります。ちなみに、本田さんの曲も、平原さんと同様、4拍子にアレンジされています。

 

かって、私は、

~~~~~~~~~~~~~

平原さんの歌には、仏教でいうところの、「悲」(カルナー)の存在を、感じるのです。

~~~~~~~~~~~~~

と書きました。

「天声人語」などという言葉がありますね。例えるならば、

 

平原さんは、悩みや悲しみにあふれた「人間の肉声」

本田さんの歌は、あらゆるものに、光を与えんとする「天上よりの声」

 

という感想を、私は持っています。

 

「歌の神様」の声を聴いた人などいませんので、誰にもわかりませんが、もし、いたならば、きっと、本田さんのような声なのでしょう。

 

そう思わせるほどの、美しい歌声です。

 

昨年11月の本田美奈子.さんの追悼会で、服部克久先生が、

~~~~~~~~~~~~~

(本田さんは)歌声に悲壮感があります。亡くなられた後だからそう思うのではなく、生来、持っているものでした。そして、それはミュージカルに必要なものなのです」

~~~~~~~~~~~~~

という旨のことをおっしゃっていたそうです。

 

全くの素人である私が、日本を代表する「大音楽家先生」に異を唱えて恐縮ですが、私はそうは思いません。

 

歌を聴いても、また、日常の話し声においても、美奈子さんの声質は、あくまでも、美しく、そして、「ニュートラル」=「無色透明」のように、私には聴こえます。だからこそ、あらゆるジャンルの曲を、しかも、さまざまな表現で歌うことが可能(同じ曲でさえも)だったのであろう、と考えます。

 

「悲しいまでに 美しい」 と、いう言葉があります。

 

“本モノ”の美しさに触れたとき、人間には、なぜか「悲しみ」の感情が湧き出でるものです。

ですから、服部先生のお言葉が、

 

「本田さんの歌声は、悲壮感を覚えるほど、美しい」

 

という意であるならば、私は納得いたします。

 

(服部先生に、タテつく素人は、小生ぐらいのものでしょうが、しょせん、「わやくちゃ」なブログですし、服部先生が御覧になることもないでしょうから、まあ、いいでしょう<>

 

§3オクターブの驚異。

 

さて、本田さんは、そのたゆまぬ努力によって、ついに、「3オクターブ」の声域を手に入れられました。「ジュピター」においても、そのソプラノ・ヴォイスを遺憾なく発揮されています。

最高音は、曲の最後の部分、「みんな 手をつないで 生きていこう」の箇所なのですが、さすがに「余裕の発声」、という気がします。

 

平原さんについては、SAPPARI WAYA: 平原綾香さんのライブIN神戸。<その2>――罪ほろぼし。(実践編)

において、

~~~~~~~~~~~~~

ただ、当日の「JUPITER」で、この曲の最高音―「F」くらいの高い音です、CDを聴いても、この音は、相当、キツそうですね―が、出し切れなかったのは残念です。

~~~~~~~~~~~~~

などと、記しましたが、平原さんの「JUPITERは、本田さんの曲と比べると、音域が広くなっています。

ただ、元になったホルストの曲と比べてみると、こちらのほうが、原曲に忠実な、音階の進行、であると私は感じました。

 

また、本田さんは、ラスト部分(例の、最高音が出てくる部分の手前)より、さりげなく(でもないですが)、転調して、クライマックスへ導いていますが、もちろん、原曲(「JUPITER」の元となった、主旋律部分に限る)には、こういった転調はありませんので、アレンジャー・井上鑑氏の工夫ですね。

 

私が、先に、

 

むしろ、平原さんの歌が直線的で、 本田さんのほうが、曲線的、ではなかろうか

 

と書いたのは、そういうことでもありました。

 

さらにいえば、

 

これは、個人の好みの問題なのですが、私自身、ビブラートは、あまり好きでありません。クラシック系のソプラノ歌手の方の歌唱は、どうも、ビブラートが耳ざわりになってしかたがないのです。

 

ところが、本田さんの歌では、ビブラートが、あまり気にならないのです。

これは、彼女のデビュー当時からの、私の個人的な印象です。

 

もちろん、ビブラートは、確かに入ってますね。

「スーーッ」と真っ直ぐに伸ばして、後半より、巧みなビブラートを効かせることが多いように感じますが。

だから、私なんぞは、「ノン・ビブラート」のような錯覚に陥ってしまうのでしょうね。

 

卑近な例えですが、某野球評論家氏、曰く、

 

「バッターにとって、直球に見えてしまう変化球ほど、打ちにくいものはない。」

 

そんなことを、聞いたことがありますが、(いや、野球とは、あまり関係ナイですよね)

 

本田さんの歌は、(単純なストレートではなく、その実)技巧をちりばめた、世界でも、トップ・レベルに位置する歌唱である。

 

これが、現在の私の感想です。

 

 

長々と書きましたが、いかんせん、素人の言うことですし、こんなことは、どうでもいいわけで、要するに、歌を聴いてみて、「スキ」か「キライ」か、それだけのことです。

では、筆者はどちらか、ということですが、------

 

双方とも、立派な作品であると、考えます。

 

 

§ミケランジェロvs円空。

 

これまた、ふさわしい例えかどうか、わからないのですが、

 

本田さんのは、そう----、完成された、ミケランジェロの彫刻を見る思いがします。

もう、これ以上の完成度はないのではないか、とも思えるのですが……

~~~~~~~~~~~~~

「違った表現が出れば出るほど、心に宝物が増えていき、それが色んな形となって、生まれてきます。(中略)そういうことを大切に、自分自身の心を動かして、歌を歌うことが出来れば、聴いてくださった方の心に、ちゃんと思いが届くのではないかと、思っています。」

(話:本田さん、アルバム『時』発表の頃

「モーストリー・クラシック」のインタビューにて)

~~~~~~~~~~~~~

お言葉にあるように、常に、新しい歌唱スタイルを模索してやまなかった、本田さん。

自己に厳しい、「求道者」のような姿を、見る思いがします。

 

比べるならば、平原さんの歌は、「円空」作の仏像、といったイメージでしょうか。

荒削りなのですが、聴く人の心を、惹きつけてやまない魅力があります。

将来が、本当に楽しみな歌手ですね。

 

平原さんのコンサート・レポートにも書きましたが、

 

平原さんの「ジュピター」は、新潟中越地震の被災者の方たちを、励まし続けている。

 

何度も書きますが、これは、素晴らしいことです。

 

ただ、いつまでも、「鎮魂」と「慰め」の「ジュピター」であっては、なりません。

一日でも早く、明日への大いなる希望の讃歌たる「ジュピター」になってほしいと、切に念じつつ、この稿を終えます。 長文乱文、及び、妄言多謝。

 

 ~~~~~~~~~~~~~

望むように生きて  輝く未来を

いつまでも歌うわ あなたのために

                 (歌:平原綾香さん、 詞:吉元由美氏)

 

嘆き乗りこえてゆく

平和な世界を

みんな 手をつないで 生きていこう

                 (歌:本田美奈子.さん、 詞:岩谷時子氏)

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コメント

てんけいさん、おじゃまします。
私は美奈子さんのファンで、平原さんに恨みがあるわけではありませんが、二番煎じの平原さんがヒットチャートの上位に入り、音域の広さが素晴しいと言われ、ホルストの木星に日本語の歌詞を付けて歌ったアイディアは画期的だなどと巷で言われていた当時、私は悔しい思いをしていました。
なぜ、美奈子さんじゃないのか!と。
テレビの歌番組で平原さんのジュピターが頻繁に流され、ジュピター = 平原綾香 という形が多くの人にインプットされてしまったのではと思えてなりませんでした。

私もどこかで野球に例えると、美奈子さんのジュピターは直球で、平原さんのジュピターは変化球だという文章を目にしたことがあります。 てんけいさんの分析には感心しました。 なるほど、たしかに仰るとおりだと思います。美奈子さんのビブラートが気にならないのは、(ビブラートの)振幅が小さいからではないでしょうか。私は初めて美奈子さんのジュピターを聴いたとき歌いはじめからのビブラートに気付きませんでした。そして次に聴いたとき おや? と思い、ヘッドフォンで聴いてみた次の瞬間!その場で仰け反りました。

美奈子さんのジュピターは〔素晴しい応援歌〕だと思います。
平原さんのジュピターも中越地震の被害に遭われた方々の〔応援歌〕となっているわけで、美奈子さんのジュピターが○で、平原さんのジュピターは×などとは申しません。

最後にくどいようですが、平原さんに恨みはありません。

投稿: 西日本 | 2007年8月20日 (月) 21時25分

西日本さんへ コメント有難うございます。

私も、平原さんに恨みがあるわけではないのですが(笑)、かって、「同じ『ジュピター』でも、本田さんと、平原さんとでは、「六本木ヒルズビルの屋上と、地下駐車場ぐらいの差がある」とか、「あんな歌が、どうして、100万枚売れるのか、わからない」と、メールに書いたこともありましたっけ。(苦笑)

ただ、「かけてもかけても、リクエストが殺到した」という、地元ラジオ局の方の話を聞いたり、ラジカセの前でCDの歌を聴きながら、ポロポロと涙を流される被災者の方たちの映像を見たとき、「ああ、平原さん、ホントにいいお仕事をしたんだねー…。」と思うようになりました。

事態が事態だけに、どうか誤解しないでくださいと、一応、前置きしておきますが、平原さんにしてみれば、歌手冥利につきる、というか、一層、シンガーとしての使命感を持たれたことでしょう。(今年も、つい先日の、復興に向けた長岡市のイベントに参加されたと聞いています)

ついに、「芸術家」という境地にまで、上りつめられた、本田さんの歌唱の素晴らしさについては、また、稿を改める機会もあろうと思いますが、


本田さんとは、また違った個性の持ち主の平原さんは、私は、「株」に例えるなら、将来、「大化け」する可能性がある、と考えています。
「迷アナリスト・てんけい」の言うことですから、アテにはなりませんが。(笑)

投稿: てんけい | 2007年8月22日 (水) 16時57分

てんけいさん、おじゃまします。
てんけいさんが2月に書かれました『星わたり』のような美しい内容ではありませんが、今朝、夢の中に美奈子さんが現れました。
夢の中の話ですのでメチャクチャな内容です。
こんな感じでした………
座席のないライブハウスのような所で、なぜか床にゴザが敷いてあり、200人ほど入ればいっぱいになる会場で、ステージに美奈子さんが登場されると同時に私たち客は立ち上がり、声援を送りました。 しかし、なぜか、美奈子さんの身長が50cmほどしかないのです。 でも、どう見ても美奈子さんなのです。 そして、曲が始まるのかと思っていたら美奈子さんは私たち客とバンドの皆さんに、険しい目つきで何か仰っているのですがそれが全く聞こえません。 しばらくして美奈子さんは楽屋へ戻って行かれ、進行係の人が、「コンサートはもう少し後になります」と仰いまして、コンサートは中断しました。 そして尿意をもよおしトイレへ行こうと思ったところで目が覚めました。
いったい、あの夢は何だったのでしょうか。
もしかして、美奈子さんは私のような一人のファンが憶測で、これからの美奈子さんを勝手に描いていることにお怒りになっておられるのではなどと思ったりしました。
てんけいさん、次元の低い内容で失礼しました。

投稿: 西日本 | 2007年8月25日 (土) 17時27分

西日本さんへ うわー----、そうですか。でも、素晴らしい----。

やはり、美奈子さん、しっかりと、音楽活動を続けていらっしゃるご様子、安心いたしました。
ところで、美奈子さんは、西日本さんが、おっしゃってるようなことで、お怒りになるような方ではない、とは思いますよ(私の勝手な想像ですが)。

それにしても、SET LISTが気になります。
「クラシカル・クロスオーバー」なのか、「日本の叙情歌」を歌っていらっしゃるのか、或いは、美空ひばりさんに挑戦していらっしゃるのか----。
「再演」が決まりましたら、是非、ご連絡ください。

投稿: てんけい | 2007年8月26日 (日) 16時11分

だれが歌ってもとても勇気の湧く歌です!
がんばってください!

投稿: 図書館のすぐれちゃんファン | 2007年12月31日 (月) 21時17分

図書館のすぐれちゃんファン さんへ
コメント、有り難うございます。

たまたま「紅白」での平原さんの歌唱を鑑賞できたのですが、ゴスペル風で、いい仕上がりでした。
おっしゃるとおり、この歌、勇気の出るいい曲ですよね。

投稿: てんけい | 2008年1月 1日 (火) 10時55分

こんばんは。お久しぶりです。
私のブログに昨日6日付で公開したエントリーでこの文章を一部参考にさせていただいたので、遅くなりましたがリンクした上でTBさせていただきました。現時点で反映されていないのですが承認制なんでしょうかね? スパムではありませんので、^ ^ もしよろしければ承認しておいて下さいませ。よろしくお願いします。

投稿: sergei | 2008年12月 7日 (日) 00時46分

sergeiさんへ こちらこそ、ご無沙汰しております。
TBならびに、コメント、有り難うございます。

>一部参考にさせていただいたので
そう、おっしゃっていただけるとは、ただただ、気恥かしいかぎりです。
「真剣に」恐縮しております。

>現時点で反映されていないのですが承認制なんでしょうか
「ITオンチ」の小生が、そのような複雑なことは、いたしておりません(苦笑)。
御不快感をもたれたならば、お詫びいたします。
「ココログ」の特性で、過去の記事へのTBには、別の「回路」(のようなもの?)が動いているように思えます。
「無事に」反映できましたので。
ありがとうございました。

投稿: てんけい | 2008年12月 7日 (日) 12時27分

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» 「ジュピター」 [Giorni Cantabili]
作詞:岩谷時子 作曲:グスターヴ・ホルスト 編曲:井上鑑 アルバム「AVE MA... [続きを読む]

受信: 2008年12月 7日 (日) 00時36分

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