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2007年2月27日 (火)

“Any key、O.K.”

----------八両編成の専用列車で着いた先は三重県の香良州であった。三重海軍航空隊へ予科練習生として入隊したのは十六才であった。ここで半年間の訓練生活を送る。厳しい訓練の毎日。聞こえてくるのは無線の音だけで何も音楽のない世界だった。ある日、訓練で田舎道を走っていた時の事。遠くの農家からラジオ体操のピアノが聞こえて来た。「音楽だ!」と思ったその瞬間、思わず涙がこぼれたと言う遠い少年の日。(以下略)

上記の文は、イルカさんがジャズのスタンダードを歌った、アルバム「エニー・キイ・OK!!」のライナーノーツ本文より引用した。

Any Key OK!! Music Any Key OK!!

アーティスト:保坂俊雄&イルカ,イルカ
販売元:日本クラウン
発売日:2005/12/07
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イルカさんご自身が、彼女の父親の体験を綴っている。それにしても、「ラジオ体操の音楽を聴いて、涙する」なんて、この方の音楽的感性は……すご過ぎる。

戦後、父君は、プロのサックス奏者として、名を馳せることになるのだが、イルカさんがこのような音楽環境にあった、ということは、全然知らなかった。

CDのタイトル「エニー・キイ・OK!!」は、彼女がステージで、父君と共演することになったとき、イルカさんが“キーはどうしよう?”と父君に尋ねたときの返事が、“Any keyO.K.であったことに由来するそうだ。戦後の日本ジャズ界で大活躍された、偉大なサックス奏者の保坂俊雄氏(父君の御名前です)にとっては、たしかに、さもありなん、であろう。

(なんと、氏は、あのナットキング・コールやサミーデイビスJr.の伴奏も務め、そして美空ひばりさんのバンド・コンダクターとしても活躍なさったそうです)

さて、イルカさんは当ブログでは、「雨の物語」についで、2回目の登場であり、アルバムも宣伝したことだし、このくらいで----(笑)いや、思い出したのは、ほかならぬ、本田美奈子.さんのことなのである。

本田美奈子.さんが「3オクターブ」の声域を持っていた、ということは、驚くべき事実だが、アイドル、ロック、ミュージカルを経て、そして、クラシック声楽に進出した歌手なんて、まさに稀有な例には違いない。

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ライブの直前、

“あのー…、実は譜面を書き直す時間がなかったもので…。このキーでもいいでしょうか?”

という質問に、美奈子さん、その楽譜を一瞥し、にっこり笑って

Any keyO.K.

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もちろん、これは、私が勝手に作った架空の会話。歌に全ての情熱を注いだ、「完璧主義者」の本田美奈子.さんのことだ、上のようなことは、実際にはあろうはずがないのだが、フト、そんな光景を想像してしまった。

本田美奈子.さんがどこへ行こうとしていたかは、最も興味あるテーマのひとつだが、先日、―幻となってしまったのだが―CD制作のスケジュールの一部が明らかにされた。

1,「アメイジング・グレイス」(クラシックアルバム)

2.日本の叙情歌集

3.「美空ひばりを歌う」

詳細は失念したが、おおよそ、以上のような予定だったらしい。私は、1及び2はともかく、3の美空ひばりさんには全く、意表を突かれた。

「えっ、なぜ、美空ひばりさんなのだろうか?」

本田美奈子.さんのことだ、スタッフの企画したプランではない、彼女自身の意志であることには、100%相違ない。

また、彼女はもともと、演歌歌手志望であった。と、すると、色々なジャンルの曲を歌いながら、もう一度、自分の歌の原点に立ち帰るつもりだったのだろうか。あるいは、日本人としての(いわば)DNAをひばりさんの歌の中に、再確認しようとしたのだろうか。ちょうど、あの“フォークの神様“といわれた岡林信康氏のように。…もちろん、今となっては、コトの真相はわかるはずなど、ないのであるが。

上記のように、本田美奈子.さんはよく「ノー・ジャンル」といわれるように、あらゆる分野の音楽に挑戦し、なおかつ、成功を収めた「天才的芸術家」です。ライブとなると、ミュージカルナンバー、クラシック曲はもちろん、あのアイドル期のヒット曲「1986年のマリリン」、そして、ときには(生来、得意の)演歌も披露されたといいます。

つまり、本田美奈子.さんは、常に新しいことに挑戦し続けた―、といっても、何も壊さず、何も否定しなかった。この人間的な「強靭さ」は、どうだろう!

彼女ほどには、どだいムリだろうが、この全てを受容し得る「強靭なる精神」に、私は、最も憧れるものです。

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さて、モーツアルトから、ひばりさんにいたる譜面をいっぱいかかえこんだスタッフが、

“あのー…、こんどのステージはどの曲にしましょうか…?”

やはり、美奈子さん、にっこり笑って、

All the musicin any keyO.K.なぁーんて、ね。………

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