忘れようとして(50)土方歳三~その9~渋沢栄一との接点
(前回からのつづきです)
NHKの新・大河ドラマ『青天を衝け』が始まり、
好調なスタートらしいです。
“らしい”と書いたのは、私は見ていないからですが、
そもそもTVを点けること自体が、殆ど無い(苦笑)。
『青天を衝け』は、渋沢栄一が主人公のドラマ。
彼が、次期新紙幣の“顔”に決定した2019年、
私は、以下のようなtweetをしていました。
~~~~~~~~~~~~~~
2019年4月9日
#新紙幣 に #渋沢栄一 が登場するそうです。
今、ブログで #燃えよ剣 = #新選組 について書いてますが、
渋沢栄一も新選組とは接点があります。
彼の回想録に「 #近藤勇 ・土方はなかなか立派な人であった」と。
~~~~~~~~~~~~~~https://twitter.com/tenkeitw
そのTwitterのタイムラインからこんな記事をみつけました。
「渋沢栄一と新選組」というコラムで、
筆者は山村竜也という方。
「風雲!幕末維新伝」(→https://rekijin.com/?p=31551)
の第14回とのこと。
上記の記事中の、大沢源次郎を捕らえるというエピソ-ドが、
渋沢と新選組の「接点」なのですね。
私も2019年4月にそのことをtweetましたが、
その時の文章ファイルが見あたりませんので、
もう一度、本を読み返すことにしました。
引用元はこちら。
青木繁男著:『京都幕末おもしろばなし百話』(2015年 ユニプラン)
著者の青木繁男は、在野の幕末史家で、
新選組記念館館長も務められました。
この本を開くと、土方歳三と渋沢栄一の
生々しい会話に接することができます。
~~~~~~~~~で区切っているのが、引用文。
~~~~~~~~~~~~~~
土方は歩きながら栄一にこう言った。
「われわれ新選組がまず寺に踏み込んで大沢を縛るから、
そこで貴公が奉行の命を申し渡されるとよい。」
「それはいかん。それでは拙者の役目が立たん。
まず拙者が踏み込んで奉行の命を伝えてから、貴公たちが縛る。
それが筋道というものだ。」
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しかし土方はこの言い分を認めないし、
栄一も、あとへ引きません。
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「そりゃ土方君そりゃ本末転倒だ。
拙者が奉行の名代として御不審のかどであるから
糾問のため捕縛すると申し渡した時、彼の罪状が決定されて
捕縛する理由も相立ち申す。
いわば拙者はこの役目の正使で貴公らは副使だ。
奉行の命を伝えないうちに、副使が召し捕らえるのは理不尽だ。」
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渋沢の言う事は、まことにごもっとも。
だが、土方にも“渋沢の警護”という大役があります。
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「そんな理屈を言っても、大沢が斬りつけてきたらどうする。」
「いらぬお世話だ。その時は相手になるまでだ。」
「貴公には、そんな洒落たまねが出来るか?」
「人を甘く見くびるな。拙者の腕前も知らんで。」
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まず、大沢源次郎とはいかなる人物であったか。
もともと旗本の出身。
新徴組支配取調役から、京都見廻組与頭勤方、
江戸に帰り、江戸御用取扱出府を歴任、そして、
このときは、幕府陸軍奉行差配の役職にあった、
ということは、いわゆる“できる”人物。
そして、蛤御門の変、また、越前敦賀では水戸天狗党討伐にも参戦、
と剣の腕前もまた、かなりのものだったのでしょう。
加えて、彼の宿所たる寺には鉄砲の備えもあった、ということですから、
土方歳三たちが渋沢栄一に同行したのも頷けます。
では、この「大沢源次郎逮捕事件」の結末を。
他の新選組隊士たちは寺の門で待たせ、
土方歳三と渋沢栄一の二人だけが、玄関まで進みます。
山村竜也のコラム(→https://rekijin.com/?p=31551)
にありますように、結局、
渋沢が単身で奥の間に入り、奉行の命を大沢に伝えました。
すると彼はすぐに恐れ入って神妙に縛を受けたそうです。
“大山鳴動してネズミ一匹”というやつですね。
渋沢は彼を新選組に引き渡した際、
“大沢の態度は神妙だったから、そこは情状酌量してほしい”
と、申し添えたそうです。
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さて、「渋沢栄一と新選組」の“接点”は、以上の如くですが、
ここで重要になるのが、いまよく目にするところの、
「エビデンス」または「ファクトチェック」ですね。
そんな横文字を使わずとも、
「証拠」「事実検証」という立派な日本語がありますから
こちらを使うべきだと私は思うのですが。
それはともかく、青木繁男の著書の“一次資料”は、
渋沢栄一の四男の渋沢秀雄が著した
『私伝渋沢栄一伝』(1965年 時事通信社)と明記されています。
一方、山村竜也のコラムには、
“一次資料”に関する記載はまったく有りません。
『私伝渋沢栄一伝』とは、
ずいぶん記述が異なっていますので、
あるいは、他の資料からかもしれません。
青木繁男は、別の資料として、
『雨夜譚(あまよがたり)』(渋沢栄一が50歳代の頃の談話集)
を挙げていますので、
山村竜也のコラムの典拠は、
これかもしれない、とは思っております。
(一番いいのは、これら“一次資料”を自分の目で
確かめてみることなのですけども)
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最後に、青木繁男の紹介されている『私伝渋沢栄一伝』から、
渋沢栄一と土方歳三との“接点”を再確認。
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土方歳三はなかなか思慮のある人物のように見受けられた。
「ワシが正使、副使の理屈を並べたので、歳三は、
君はもと武家の出かと尋ねた。
そこでいや百姓だと答えたところ、彼はひどく感心してね。
とかく理論の立つ人は勇気がなく、
勇気のある人は理論を無視する。
君は両方いけるとホメてくれたっけ。」
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この箇所は2019年4月にtweetした記憶があります。
NHK大河ドラマ『青天を衝け』では、
町田啓太が土方歳三役で出演、ということが発表されていますから、
この「大沢捕縛事件」のエピソードが
脚本化されることは、決定的と言っていいでしょう。
TVドラマは全く見ませんが、
その回だけは見てみようか・・・なぁんてね(笑)。
(つづく)(文中敬称略)
PS:ピンク色の文字にはリンクを貼っています
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